2007-03-16

[]俺の底

なんだかたまに思い出すのだけど、十代の頃にやっていた仕事でいまだにあまり意味の解らないものがある。思い出しているのになんの仕事だったのかよく解らない。その会社というか工場的な所で確かアルバイトをしていたのだと思うのだけど、普段はピッキングだとか在庫確認だとか棚卸しみたいなことをやってたような気がするんだけど、仕事がないと地下に回されるのであった。

その地下って所がなんだか不思議なところで、巨大な滑り台みたいなところに段ボールやら折りたためるプラスチックの箱が振ってくる場所で、その滑り台の一番下で俺やら年齢不詳だけど明らかにおっさんの人とがたいのいいおばさんと南米あたりからやってきたという外人さんが段ボールを潰したり箱をわけたりするというようなことを行っていた。

当時まだ夢見がちだった十代の俺はそこに回されるのが心底嫌であった。暇なときには本当にすることがない感じなのに突然バッカーンとかものすごい音と共にどんどこ箱が落っこちてきたりするのである。すごい数が。まあ仕事自体もいやだったのだけどもいつの間にか効率的に仕事をこなしている自分というのを発見してまた嫌な気持ちになったりしていた。俺はこの暗いところでこのまま一生箱を潰したり並べたりしながら生きていくのだろうかなどというようなことも思ったりしていた。

で、仕事もあれだったのだけど、そこの人間関係が微妙な感じで、年齢不詳のおっさんは指がないし、ってなにがしかの事情があったのだろうけど、当時の俺にはただ指がない人という風に映っていて、得体の知れない恐ろしい人という感じだったのだけど、まあ気さくな人でもあった。恐ろしいのに気さくというのもわけがわからないけど、基本的にべらんめえ口調でなにを言っているのかよく解らなかった。

もう一人の外人さんは箱が落ちてこないときにはいつも煙草を吸っていた。なんでも元々は宝石商であったのだけど内戦がどうのこうのといわれ、妻子を南米に残して日本に来ているとかそういった話を俺に対して延々とする人であった。俺はこんな仕事をしている人間ではないのだみたいなことをよく言っていた。

もう一人いた体格ののいい女の人はよく解らない感じだったのだけど、どうも年齢不詳のおっさんと付き合っているようだということが働いているうちに解ってきた。しかしそれがなんだか元宝石商は気に入らないらしく、わりと険悪な感じであった。ただ俺は仕事がないときにしかそこへは行かないのだけど、他の三人はレギュラーという感じで、その地下以外の所では会ったことがなかったので実際その人たちがどんな関係であったのかということについては推測の域を出なかったような記憶がある。というか他の人たちはそんなところの存在も詳しくは知らなかったような気がする。

しばらくして俺はそこを辞めてしまったのだけど、その後も本当に仕事が辛いときなどにはそこのことを思い出す。そこに比べたら今の俺はなんて恵まれているんだろうと思えるのでまあいい経験にはなっているのだろう。しかし思い出すとあの三人が今もそこで険悪な雰囲気のなかで箱を潰したり並べたりしているような気がして少し妙な気持ちになるのである。

[]清水義範の呪い

10代半ばくらいに筒井康隆やら椎名誠辺りの不条理SFみたいな本ばかり読んでいた頃に清水義範の本もよく読んでいたりしたのだけど、そのせいかなんかちょっとふざけた発想が浮かんでそれを文章にしようとする段になると「もうこの辺は清水義範が15年くらい前に通過していたりするんじゃないだろうか…」などという思いに囚われることがあります。でも書くけど。

[]愚零闘

なんの前触れもなく昔に髪があった頃のグレートムタのペイントをして一日を過ごすというのはどうだろうか。普通に過ごす。たまに毒霧を噴いたりもする。夕方には大体ペイントが剥がれています。ああ俺に画力があったら今頭に浮かんでいる面白いものを漫画にできるのに。残念だ。