■ [読書]「サウンドトラック 下」 古川日出男
やっと読み終わった。上巻読んだ時点で思っていたことだけども、なんだかよく解らないけどとにかくすごいものを今俺は読んでいるというか読まされている…!という勢いのまま最後まで突っ走られた感覚が。すごい勢いでしたよ。そしてなんだかよく解っていない俺というのが今ここにいるわけですけども。
全体のあらすじとしては、遭難した男の子と女の子がヤギの島でサバイバルして救われて、色々ありながらも成長して、最終的には東京に対してものすごく大きな影響を持つような存在になってしまうというような話だったんでしょうか。まあよく解ってない人間の書くあらすじなんてよく解らないものですけど。
要約してしまうと、思春期の力が具体的に発露するととんでもないことになる可能性もあるんだぜというような内容だったような気がする。違うような気もする。ここに出てくる人たちは間違っても普通の少年少女ではないのだけど、まあこの辺りの年頃の人たちというのは誰しも特別な存在であるわけで、それが具体性を持ってしまったという話なのかな。
とりあえずこの人の書く東京というのが妙にリアリティがあっておもしろ怖い。細かいことはよく解らないけど古川日出男が書くならそういう未来もある、というかこの世界はどこかに存在しているという実感がどこからともなく。いやないけどこんな東京は。少なくとも今のところは。
とりあえず全体のストーリーを思い返してみても結構面白いのだけど、断片的な場面場面が異様に心に残ってしまった感じである。一個一個のインパクトが強すぎる。何かの拍子にいきなり思い出しそうな、そんな。しかもそういう場面を簡単に書いているように見える。キャラなんて見開き一ページで立てられるんだぜっていうような。
でも書き込んだら書き込んだ分だけ深みも増していく。唐突に出てきた感があったレニの存在感たるやねえ。あーあと動物に関する描写が面白すぎる。古川日出男の書く図鑑が読みたい。ただまあとっちらかってる感がないこともない。そこら辺もひっくるめての魅力ある文章なんだろうけど。これをぴっちりまとめたら大変なことになるんだろうな。ともかく読書をしているのに読書じゃない感覚を味あわせてもらいました。この人はすごいよ。