2006-11-14

[]「告白」 町田康

うわわわわ…。前からすごい作家だとは思ってたけれども、一線を越えたような気がする。すごい。すごすぎる。結論から書くと泣いた。正確に書くと泣きそうになったけどグッとこらえた。でも心の中では泣いてたっていうんすか、そういうのあるじゃないっすか。というかあんまりにも大きい衝撃の読後感が残ると人間、唖然とするというかぼうとしてしまいますよね。

というかあんまりよく知らなかったんですけども、これは河内十人斬りという実話を元にした小説ということで、その時点でものすごく驚いた。その時点いうても読み終わったあとに河内十人斬りで検索した結果として驚いたわけであり読み終わってから驚いたのであった。というか、熊太郎の実際の心境なんてのは全部町田康の想像であり、ある程度の記録は残ってんでしょうけども、憶測と肉付けだけでこんなにもリアリティが出せるのかしらんという驚きが。

あらすじとしては、自分の思ったことが上手く表現できない、周囲に迎合する気はあるのにそれができないからして、子供の頃からねじ曲がり、真っ直ぐ生きようとすればするほど道をそれてまたそらされていき、なんとかして幸せになろうとするというか、投げやりになったりまっとうになったり、思ってることと反対のことばっかりしたりしながらも、生きているのだけどある時全てに絶望するって話というか、まあなんてかとにかく読んでみれば最後の告白の意味がグサグサと突き刺さってくるわけで、読んでて正直つらい。こんなにつらい読後感というのは初めてかもしれない。

救いがないからつらいというのとはまた違うつらさ。熊太郎の思考をそのまま書きつづってきた町田康文体のおかげか知らんが、あるところで完全にシンクロしてしまうのであった。そしてあるところで強制的に引きはがされて、そして最終的にまた同調させられる。一回離れた分だけその時の衝撃というのが大きかった。つらかった。けど、こんなに読書として面白い本といううのもなかなかない。といいますか、町田康さんの小説でこれだけの長編というのは読んだことがなく、いつもああ…もっと読みたいな…もっとこの人の文章世界にいたいと思わされるわけであり、これだけの長い間この文章に触れていられたというのが単純に喜びでもあったかもしれない。

とりあえずでも、ある意味での町田小説の完成品みたいな、そんな印象も受けた。今までに出てくる主人公というか、エッセイなどでの町田康さん本人も含めて、いつもの町田康小説の主人公であったと思います熊太郎は。その思考で行き着くところまでいったらこうなったというか、こういう小説になったというか。そんな印象。あとよく知らないけれどもこの作中の河内弁みたいなのがものすごく気持ちよかった。ああしかし面白かったなあ。このクラスの読後感というのはなかなか味わえないっす。すごかったっす。人は何故人を殺しますか。

告白

告白

 

[]原付日記

渋滞でのろのろ走っておるような状況で、前の車が抜けるかどうか危ういときには絶対にすり抜けしないんですけども、そんなところをビュンビュン走っていく人たちを見るたびに「くっ!ガッツが足りない」というフレーズが浮かぶわけであり、俺にはあの人たちのようなガッツはないと思うと共にキャプテン翼世代ってのはなんかちょっと恥ずかしいものがあるような気がするよねということを思うのであった。