2006-06-23

[]「もつれっぱなし」 井上夢人

あーこんな本あったんだーと思って何気なく読んでみたらえらい面白かった。この人の本は当たり外れが大きいというか、長編はすべて面白かったのに短編ものは今ひとつピンと来ないという印象だったんですけども、これは短編集なのに面白かった。非常に。

すべてタイトルに「○○の証明」というのが付く短編集で、すべてが会話文のみで構成されている。あ、この感想文も会話形式にすればよかったような気がしたけどまあいいや。そんな技術ないし。ともかく男女一組の会話のみで話が進んでいくのですが、どうやら俺が知らないだけでこのような試みの小説というのはそれなりの数存在しているらしいのですけども、俺は初めて読んだのでえらく感心させられてしまった。

というかこの作家さんは相変わらずというか、本当に上手いなあ…と思わされた。会話のみで見事に物語を成立させている。通常独白や地の文で補足されるべき様々な事柄も、会話の中で説明臭くなく自然に理解させるという感じであり、特に最後の章などはこういう事も出来るんだな…という例のなんとかトリックの極みだとまで思わされた。

会話文という形式も面白いんですけれども、話そのものも非常によくできているというか、軽く読めるんだけどなんかちょっと考えさせられる感じであり、読後感も非常によい感じで久々にひねくれた感じじゃなくって素直に面白かったといえる一冊でした。

もつれっぱなし (文春文庫)

もつれっぱなし (文春文庫)

 

[]やめていく

二十歳のときにバンドやめて、二十一歳のときに当時同棲していた女性に振られて何度か行った風俗通いをやめて、二十三歳のときにキャバクラ通いをやめて、二十五歳でパチスロをやめて、二十七歳で仕事をやめて、二十八歳で無職をやめて、二十九歳の今煙草をやめるということになっているので、来年の節目っぽい三十歳には何をやめようかという感じである。

順当に行くと酒をやめる、もしくは独身をやめるなどという展開があるかもしれないけれども、その他に適当なものが見当たらなければブログをやめるというのもありかもしれない。というか酒をやめるより煙草をやめるよりもパソコンがある限り、すんなりやめていくというか完全に足を洗うのは大変そうだなあなどという想像だけでげんなりする。何かを始めるのにもエネルギーがいりますが、何かをやめるときというのも思ってる以上に熱量を必要とするのよね。結婚するより離婚するときの方が大変とかいうのと同じですね。大穴的展開としては人生をやめるとか人間をやめるぞとかそういう選択肢も出てくるかもしれないけれども、なるべくそういうのには気がつかずに生きていけたらいいなと思うすねよ。