■ [漫画]「夕凪の街 桜の国」 こうの史代
おお、面白いなあ…と思って読んでたら、すんげえ重い話であった。こうの史代さんの描く広島弁喋る女の人はかわいらしなあと思ってたら、いわゆる原爆の話であったりした。こう、ゆらゆらと読んでいた分その落差に愕然として、なんか得体の知れない寒さというか明確には表現しづらい感情をおぼえてしまったわけです。
というかこの絵柄で…ねえ。面白いと言ってしまうのには抵抗はあるんですけど、それでも面白いことは面白かった。多分俺くらいの年代であるとはだしのゲンくらいしか原爆に関する漫画とか読んだことがないというのがわりと普通であると思うんだけども、はだしのゲンでは生じなかったこの空虚な感じがすごい。辛いというより自分の無力感をものすごい勢いで実感する。キツい。結構キツい。
だからといって心に深い傷を残すとかそういう漫画ではなくて、心に強く残る漫画である。というか漫画でしか生み出せない表現というのをやってのけておられるんだなあという印象が。すげえ漫画家だ。完全な他人事を一瞬でも我が事のように錯覚させるというだけでもすごい。しかしなにも残らないものを読むよりなにかを残されるものを読んだ時の方が感想が変な感じになるのが不思議だ。たいていの人が似たようなことを書いているというか書かされてしまうような漫画であるような気がするので、違った形で書こうとするとやっぱり感想が書きにくくなるのであります。そんなことはともかく死ぬまでに一度は読んでおいた方がいい本だとは思う。