2008-07-03

[]「黒龍の柩 下」 北方謙三

上巻のテンションの低さから若干不安になっていたんですけども、近藤やら沖田が死んでからはもうなんかオリジナルストーリーでオリキャラが大暴れしていてなんかもうすごいことになっていた。とりあえず旧幕府軍は追い込まれて北海道に行ったわけではなく、徳川慶喜を王とする新国家建設のために蝦夷地に向かうという時点でちょっと狂っているような気がするのだけど、なんか全体の流れとしては史実と大きく外れているわけでもないのでさすが北方…と思ったりした。

つうかなんかやっぱ土方が男前すぎる。ハードボイルド土方歳三という感じ。とくにメインが土方一人になってからは孤独な感じとか、目的を遂行するためだけに生きるところとか、力で圧倒していく所とか、格好いいんだけどなんかどっか寂しいっつう。

なんというか戦闘の規模としては三国志なんかに比べるとあまりにも小さいのだけど、土方が結局一度も負けることなく終わっていくというのが、ものすごい。相変わらず戦闘描写においては図抜けているつうか、妙な説得力を持っていてなんか納得させられてるんだけど、よく考えると主人公側じゃない方の敵が弱すぎる。三国志なんかだと相手側も丁寧に書くのでそこら辺も補完されてたんですけど、これはだいたい土方の方の視点で書かれており、薩長というか官軍側がわりと正体不明でなおかつ西郷ミスターXみたいな扱いされているので、不気味なんだけど基本的には弱いという。

でもまあ北方オリジナル新選組としては良くできているとは思います。北方新選組というより北方版燃えよ剣という感じだろうかね。しかしやっぱ読み終わった直後に燃えよ剣が読みたくなったので、三国志の時もそうだったけど北方版を読むとオリジナルに近いものを読みたくなるっつう変な効果がありますよな。

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)