■ [読書]「三国志 12」 北方謙三
もうだんだんと特筆すべき人物がいなくなってきたがしかしその中で突出してきた馬謖を泣いて斬る巻。馬謖は孔明に泣いて斬られるためだけに登場するというか、馬謖つったら高いところいって逆落としで張コウを倒そうとしたら囲まれて水飲めないっつうイメージしかなかったんですけど、やっぱり北方馬謖はわりと魅力があってちょっと泣けた。
なんつうか本当に小賢しいんですけども、小賢しさ故に目をかけられて、小賢しさ故に死んでいくっつうか、なんか他の三国志だとちょっと小憎たらしい所があるんですけど、これだと本当に小賢しいだけでなんとなく憎めないといいますか、あくまでも孔明のために動いて結果ただ一度の致命的な失敗で退場っつうなんかちょっと寂しいというか哀しい人やなあっつう。
ほんでここに来て趙雲が死ぬわけですけども、趙雲がここまできっちり老いてわりと人生を全うして死んでいくというのは解っているのだけどなんか意外な感じがした。なんか横山三国志とかのイメージで死ぬ直前までものすごく元気な山田太郎みたいな感覚があったから、黄忠みたいな感じで死んでいくのが驚きというか。
そしてもう完全に主役になりつつある孔明ですけども、毎回毎回作戦がものすごい大規模なのがびっくりする。ほんでものすごい自虐的なのにまわりからはものすごい軍師としての評価が高くて、司馬懿なんかには必要以上に恐れられているそのギャップがなんだか面白くて。俺なんか俺なんかつってるのにまわりは孔明孔明って頼ったり怖がったりしてるのが。そんな中で唯一普通につきあえたのが趙雲だったのだろうけど、その趙雲がいなくなったらもうまともに孔明のことを見てくれる人がいなくなるというか、あくまでも一人の人間として孔明を描きたいんであろうなあ北方先生はという感覚が。
ほいで孟達を七回捕まえるやつですけど、色んな三国志で鬱陶しいくらい天丼だなあと思っていたのがわりとここではすんなり話が進んでいたというか、ちょっと簡略化されていた感じがしたんで、ああ、やっぱ北方先生もこれ長いよ!って思ったんかなあと勘ぐった。三顧の礼もわりと簡単だったしなあ。それでいて話自体の筋はきちっと通しているので納得はいく。
そしていよいよ最終巻ですなあ…。ここまであっという間に読んだような気もするのだけど、だいぶん時間がかかっているわけで、初期の呂布とかにおののいていた頃が懐かしいです。なんとなくまだ終わりそうな気がしないけど終わってしまうのね。