■ [読書]「傍若無人剣」 南條範夫
前田慶二郎(前田慶次郎)が主人公の短編集。南条先生の著作は駿河城御前試合以来であり、ものすごく期待して読んだらばそれなりに面白かった。南条先生といえば残酷時代小説というイメージがあったのだけど、主人公が傾奇者なので存外お気楽な感じの小説になっている。
前田慶次ものといえば隆慶一郎先生の一夢庵風流記が有名ですが、扱っている内容はほとんど同じであり、前田慶次の性格もほとんど同じでほぼ同じような時系列で進んでいるのにどうしてこうも受ける印象が違うのか。結論から書くとどちらも面白いんですけれども。
前田慶次という人は存在そのものが異端というか、多分史実をなぞっているだけで十分面白いというかキャラが立っているタイプの人間なんですけども、南条先生においてはこの主人公を使って時代劇というか活劇みたいなものを書こうとされたのだろうなという印象。駿河城~のときにも思ったけれども、文章にテンポがあって非常に読みやすい。というかこちらは全体的に軽妙すぎて「か、軽ーい…」という印象すら抱いてしまった。だが、それがいい。
しかし所々一夢庵~と違う箇所があるのだけど、どうもこちらの方が現実的というか、こちらはこちらで現実離れしている部分があるのだけど、花の慶次にしろ一夢庵にしろどんだけ誇張してんですかよ…と隆マジックというか原マジックから目覚めさせてくれる感じなので、この二作を好きな人は読んでみるべきだと思います。しかしまあいずれにしても前田慶次は無敵であり超人であるよなという印象は変わらない感じであります。
あと二つは超短編という感じであり、両方ちょっとしたギャグかと思うくらい娯楽小説してる感じでありました。