■ [読書]「魔風海峡 上下」 荒山徹
今年一発目にえらいのを読んだった。テレポーテーション、ゾンビ、透明人間、巨大人型決戦兵器、パーツ人間などが出てくるスーパー忍法帖です。つうか忍法じゃなくて特に朝鮮方は妖術の類だよなぁ。山風忍法帖でいうと果心居士クラスのキャラが続々と。霊的概念ありきの世界だから余計そう感じるのかもしらん。
ストーリーは真田幸村率いる真田十勇士が豊臣家再興のために石田三成の命により、朝鮮出兵の最中である朝鮮半島へ出向き、昔の日本が朝鮮に隠した財宝を取りに行くんですけど、それを知った徳川家康が服部半蔵に阻止させようとするという感じで、服部半蔵は高麗忍者というか朝鮮忍者7名と朝鮮の中国からの独立という夢を持ち、そのために財宝を手に入れようとする臨海君にくっついて抗争をするわけです。
上巻では正直言って若干退屈というか、朝鮮の歴史に関する知識を持ち合わせていない人間には敷居の高さを感じさせるような気がした。真田幸村たちが主役だと思って読んでるとほとんどと言っていいほど活躍の場は無いので拍子抜けする。それでもいやらしい徳川家康がみられたので面白かったですけど。あと朝鮮の歴史そのものもどこまで本当かは判断しかねるのですが、いったん興味を持つと非常に面白いことが書いてあります。というか当時の朝鮮て今の日本に少し似てるななどと思った。そういう書き方をしているせいかもしれないけれど。
そして下巻ですよ。ここまで割と真面目に読んでたらいきなりとんでもない展開に。なんというか、時代小説はそこそこ数を読んだ気になっていたんですが、ここまで脳に来る小説は初めてだ。映像が鮮明に脳裏に浮かぶ。小説の半分使って土台をがっしり作ってあった分唐突な暴走展開に頭がやられる。初めて読んだので解らないんですけど、普段もこんな小説書いてるんですかこの人は。思いつきの破壊力というか、インパクト重視というか必要性ははっきり言って全くないような気もする。でも面白い。あと忍術部分の描写も結構脳にきますね。
時折史書を引用したりして、実際にこのようなことはあったのだ。という説得力を持たせようとしているのだろうけども、この人の小説で史実云々いわれても、いや、そういうこともあったかもしれないじゃないか、あったっていいじゃないか!というくらいの弱々しい説得力しかないんですけど、それはそれでいいと思うっす。うん。引用そのものが創作なのではないかという疑いすら抱いてますけど俺は。
過去に自分で時代小説というジャンルなら今はあんまり注目されてないっぽいからわりと無茶苦茶なこと書いたりしてもいいんじゃないか、などということを思いつきで書いたことがあったんですが、もうすでに全力で実現されてしまってる感じがしたのでなんというか非常に感慨深い気分になりました。