2008-01-08

[]「三国志 10」 北方謙三

新年明けまして年越してしまった北方三国志の今年一発目の感想。とりあえず曹操が…ほんでもって張飛が…の巻。曹操に関しては志半ばといえば半ばながらも一応の達成感があるというかある意味大往生であるのでそんなに悲しみもなく、今までありがとうそしてさようなら曹操という感じでわりと穏やかに見送れたのだけど、張飛はなあ。無念にもほどがありすぎる。

張飛は北方三国志では関羽よりも明らかに存在感もあって、北方三国志でのオリジナルエピソードを交えつつ、奥さんとか持ち馬やら従者といったここにしか出てこないもの達の存在感がすごいことになっているので、その消失感もまたすごいのですよな。普通の張飛ならばただ逆上して酒に酔ってグダグダになってるところで寝首をかかれるわけですけども、この張飛は我慢に我慢を重ねてそんでほとんど全てを失って、しかし関羽の無念を背負って孫権を倒すという一念だけで生きているのにあの仕打ち。結果はあんまり変わっていないんだけどそこにいたるまでの過程がつらくてちょっと泣きそうになった。張飛は切ない。

そしてこの張飛まで失ってあの劉備がどうなってしまうのだろうかという期待と不安。残り時間が少ない事は解りきっているのだけどこの劉備はなんかやってくれるんじゃないかという期待感が。というかここまで読んで蜀に思い入れがないっつうやつはあんまりいないような気がしますけども、それに対する呉がすごいヒールになっちゃってねえ。致死軍もあれですけどこの呉はちょっと卑劣すぎる。てまあ曹丕もそうなんですけどある程度年の若い新世代の将っつうのはなんか妙に冷たい感じがするというのは本格的に三国時代になって戦のことばっかり考える人間よりもある程度冷めた視線で大局を見れる方がよろしいとかそういう事なんでしょうかね。

単純に北方先生は戦馬鹿を書いてる方が楽しそうであり、それに比べて文官タイプを書くとどっかしら冷たい感じというか何かが解っていないという感じの書き方になっているので、北方謙三の好みの問題なのかもしれない。とにかくもう解ってたことだけどどんどん退場者が出てきて本当に寂しい。どんなに強かろうが頭よかろうが死んだらおしまいなのよな。

三国志〈10の巻〉帝座の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈10の巻〉帝座の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)