2007-01-06

[]「蝉しぐれ藤沢周平

藤沢周平。名前だけはさんざん聞いていたものの、なんとなく新しい時代小説作家に手を出すのもどうかしらと思っていたんですが、なんとなく今俺が最も読みたい類の時代小説なのではないかという勝手な期待から読んでみたらば想像以上だった。これほどとは。

まず美しい。文章が物語が描写が美しい。普段小説を読んであまりそのような感想を抱いたりすることはないのだけど、視覚から体全体に藤沢周平的なものが染み渡っていく感じというか、読んでるうちにごく普通に入り込んでいるというか、読書をいろんなものよりも優先させたのは久しぶりというか読まずにはおれないというか。淡々としているんですけど読ませる。

あらすじとしては江戸時代に東北の小藩で生まれ育った主人公の少年から青年、そして大人になっていくまでに起こる話を淡々と描くというかかなり色々なことがありすぎるほどあるのだけども淡々とそしてはっきりと史実に残るような大きな話ではないながらも末端の武士の生き様というものをきちんと読ませてくれる。

どこかしら隆慶一郎的美化みたいなのがそこらに感じられたりしたんだけども、普通に受け入れられるというか、そ、そんなあ…という感じの違和感はない。んでもって戦闘シーンのリアルさ、といっても実際に自分で体験したことがあるわけではないのだけど、それでもものすごく現実的に感じられる剣戟描写というのがすごい。あ、そうそう、この小説に感じる郷愁というのも全く経験してる感じがないのに何故か懐かしいという不思議な感じになっている。経験してないことに対して既視感を感じさせるような描写。

とりあえず物語の軸として、不遇の身に置かれたが故に自分を律することに特化したような主人公、というのが最終的にああいうことになるのがわりと気持ちがよいので、こう、ためて放つまでの丁寧さというのも素晴らしい。こうなればいいなと思ったら書いてしまう伝奇小説家というのは知っていますけども、ここまでタメの効くというか我慢出来る作家というだけで妙に尊敬できてしまう。いやまあなんというか、ねえ、もうこれ以上褒める言葉が出てこないんですけども俺の書いてる程度のすごさではないですよ。この今の感情を上手く文章に出来ない。藤沢周平恐るべしなどと思った。恐れる必要はないけど。いやはや。なんとも。

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

[]今出ました

配達やら出前なんかを待ってるとき、また仕事やら何やらでの待ち合わせの際に相手先に電話して「今出ました」とか言われると「そば屋か!」と思うのはきっと万人共通のあれですけど、今出ましたと言われると絶対に今この瞬間まだそこにいるべ…とは思いつつ、全然そば屋と関係ないところでもそば屋を連想してしまうのか意味が全くわからないので困るよね。困らないかね。困らないのかね。そうか。

[]ハタリハタマタよ

なんとなく「ハタリハタマタ」というフレーズが頭の隅っこにこびりついて取れなかったんで、なんだっけこれ…と思って悶々としつつ真剣に思い出してみたところ、プロレスラー蝶野正洋がリングの上で誰かとガチャガチャもみ合ったりしているときに、蝶野はなにか意味のわからない適当なことを言っているという話があって、俺はそれを確実に知ったのはNWOジャパン時代にグレートムタを勧誘していたときで、その時にNWOTシャツを渡しながら言ったのが「ハタリハタマタよ!ムタ!」とかそんなんだったんではないかと思って、一応念のため検索してみたらそれはタイガージェット・シンの言葉であるみたいなことが書かれていたので、じゃあじゃああのとき蝶野正洋は何を言っていたのだろうというのを思い出そうとしてまた悶々とし始めるのであった。