2008-01-11

[]「三国志 11」 北方謙三

馬超が形式的に死んでとうとう劉備が死んだ。関羽退場以降話の流れが蜀に向いているような気がする。そりゃもう曹丕の面白味のなさとか呉をあそこまでヒールに仕立て上げたら結果蜀がメインに据わってしまうのは致し方ないことなのかもしれない。いくら司馬懿やら陸遜なんかが頑張っても、北方三国志における劉備の存在は大きすぎたわけであり、ここはもう間違いなく劉備の巻であった。

この巻で面白かったのは関羽やら張飛がいなくなったとしても、劉備がいるだけでまだ天下を狙う術を諦めない孔明というか蜀の人々が、劉備の命運と共にしょぼくれていくという感じになってしまい、なんつったらいいか一人のカリスマによって出来上がった国であり、また他の三国志に比べても有能であった頭が死んでしまう事によって背骨がグラグラになってしまうというか、国の存在意義すら揺らぎはじめてしまうんだけど、そこで踏ん張る孔明が素晴らしいというか見どころといいますか。

ともかく徳の人って感じしかなかった劉備のイメージですけども、この北方劉備ヤクザ親分が国のことを思ってわりとそのままの考え方で一国の主になってしまうっていう感覚は蒼天劉備と似てるようでこっちの劉備の方が全然骨太で格好良く、今までのどの劉備よりも好きな劉備であった。そんでまたまたこれが最後まで格好いいのよな。曹操の最期と状況的には似てるんだけども、どちらも違った意味で格好いい。

しかし毎度毎度思うのだけど、この三兄弟は死ぬ順番がよくできてるような気がする。一番残ったらやっかいそうな関羽が最初に死んで、普通には死ななそうな張飛が妙な死に方をして、何もなさそうな劉備が最後に見せ場を作るっていう。同年同月同日に死す云々はあれですけど、この三人の死っつうのは結局連鎖してるんで結局桃園の誓いって生きてるんよなと思うと同時に、逆だったら関羽がすごいことになってたんじゃないかというような気もする。

んで馬超は最後まで馬超であり、もうちょっと存在感を増していくのかと思ったらわりとあっさりいなくなってびっくりした。仙水と樹みたい。それにしてもこれからの孔明のことを考えるとちょっと憂鬱になる北方三国志衝撃の第十一巻。

三国志〈11の巻〉鬼宿の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈11の巻〉鬼宿の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)