■ [漫画]「蒼天航路 35~36」
完結。最終回だけ読んでしまっていたんですけど、なんだこの関羽は。とにかくひたすら関羽関羽関羽雲長関羽という感じの二巻だった。吉川三国志あたりでもわりと盛り上がる部分だったと記憶しているのだけど、ここまでやるとは。というかあくまでも曹操よりの話に終始していた印象があったので、曹操よりも関羽で締めくくり近辺を持っていくとは思わなかった。
曹操の晩年をくどくど描くということをせず、というか病に伏せってしまったということもあって特段描くべき事がなかったせいなのかもしれない。三国志知識が吉川三国志しかないせいかどうしても対比してしまうのだけれども、曹操の晩年というのは諸葛亮の台頭によってわりと苦渋の日々を送るという認識だったのだけど、なんかもう今までの猛烈な勢いで生き抜いてそのまま死んだという感じであります。
関羽といえば神になって奉られるような人間であるのでこれくらいの扱いでいいのかもしれないですけど、それに比べてその他大勢の扱いがまたちょっとすごかった。その他大勢つっても準主役級の人間ばっかりなのだけれど、1ページで何人の最期を表現してしまうんだよう…と少し切ない気分に。主役の曹操の死すら霞んでしまう。つーかこの漫画的には関羽を神にしたのが曹操なので結局の所曹操が一番上なんだぜっていう解釈もありか。なるほど。
でもやっぱり通して振り返ってみるとこの話は曹操の話であり、曹操に付随する諸々を好意的に解釈して異質な筆力で描き上げた傑作という事になるのだろう。殆ど主人公不在のこの二巻での盛り上がりを見てしまうと曹操の死以降を描いても面白いのは面白いとは思うというかもう少し描いて欲しかったような気がするのだけれど、やはり一本抜けてしまう感じなんだろうなあ。曹操がいなきゃ意味ないか。しかもここに出てくる孔明は変態だし。仲達も地味だからなあ。地味以前にほとんど出てこないし。
で、とうとう描かずじまいだと思っていた桃園の誓いがこれ以上ないタイミングで入ってきたのでそういうのは相変わらずなんというかあざといけれど上手いなあと。本当もういいとこ取りだもの。とにかく三国志という物語に一度でも触れたことのある人は読む価値のある漫画だと思います。素晴らしかった。